審美歯科の広告には、患者さんを守るための重要なルールが存在します。
特に、クリニックのウェブサイトやSNSでの情報発信も「広告」と見なされ、医療広告ガイドラインの規制対象となる点は、知っておくべき大切なポイントです。
この記事では、医療広告の基本的な考え方から、「審美歯科」という表現がなぜ原則として広告で使えないのか、ウェブサイトで情報を適切に発信するためのルール、そして広告で絶対に避けるべき7つの具体的な禁止事項について詳しく解説します。

ウェブサイトでの情報発信で、具体的に何に注意すればいいのだろうか?



この記事を読めば、ガイドラインを守った適切な情報発信の方法がわかります。
- 審美歯科に関する医療広告規制の基本的な考え方と背景
- 広告でやってはいけない具体的な7つの禁止事項
- ウェブサイトで審美治療の情報を発信するためのルール(限定解除要件)
- ガイドラインに違反した場合のリスクと具体的な対策方法
医療広告ガイドラインの基本と審美歯科の位置づけ


医療に関する広告は、患者さんの健康や治療の選択に大きく関わるため、守るべきルールが定められています。
特に、近年ではクリニックのウェブサイトやSNSでの情報発信も「広告」と見なされ、医療広告ガイドラインの規制対象となっている点を理解することが非常に重要です。
これから、なぜ医療広告に厳しいルールがあるのか(患者保護の背景)、どのようなものが広告にあたるのか(広告の定義とウェブサイト)、そして、よく耳にする「審美歯科」という言葉がなぜ使いにくいのか(なぜ「審美歯科」表記が原則広告禁止なのか)、保険外診療である自由診療ではどのような点に注意すべきか、という基本について詳しく見ていきましょう。
これらの基本的なルールを把握することが、患者さんに誤解を与えず、信頼される情報発信を行うための第一歩となります。
患者保護を目的とした医療広告規制の背景
医療は、人の生命や身体に直接関わる、極めて専門性の高いサービスです。
そのため、もし不確かな情報や大げさな表現の広告によって患者さんが不適切な治療を選んでしまった場合、その影響は計り知れません。
多くの患者さんは医療に関する専門知識を持っていないため、広告の内容だけで提供されるサービスの質を正確に判断することは非常に困難です。
このような背景から、患者さんを不当な広告から守り、適切な医療を選択できるようにするため、「限定的に認められた事項以外は原則として広告してはならない」という考え方で、医療広告は厳しく規制されています。



患者さんは専門知識がないから、広告を鵜呑みにしてしまうかもしれないな…



そうなんです。だからこそ、誤解を与えない正確な情報提供が求められます。
こうした患者保護の観点に基づき、医療広告に関するルールが定められているのです。
規制対象となる「広告」の定義とウェブサイトの扱い
医療広告ガイドラインでは、規制の対象となる「広告」を、いくつかの要件で定義しています。
具体的には、厚生労働省によると、①患者さんを誘い込む意図(誘因性)があり、②特定の医療機関や医師の名前が分かり(特定性)、③不特定多数の人がその情報を認識できる状態(認知性)の3つの要件を満たすものが広告に該当します。
重要な点として、2018年の医療法改正により、これまで規制対象外とみなされることもあったクリニックのウェブサイトやSNS、ブログなども明確に広告規制の対象となりました。
つまり、ホームページに掲載する情報も、ガイドラインを遵守する必要があるのです。
要件 | 説明 |
---|---|
誘因性 | 患者を誘い込む意図があること |
特定性 | 特定の医療機関名や医師名がわかること |
認知性 | 不特定多数の人が見られる状態にあること |
自院のウェブサイトやSNSで情報を発信する際は、これらの内容が「広告」に該当する可能性を常に意識する必要があります。
なぜ「審美歯科」表記が原則広告禁止なのか
よく使われる「審美歯科」という言葉ですが、医療広告ガイドラインでは原則として広告に使用することが認められていません。
その理由は、「審美歯科」という表現が指し示す治療内容が非常に幅広く、具体的にどの治療法(例えば、ホワイトニング、セラミック治療、歯列矯正など)を提供するのかが患者さんにとって不明確であり、誤解を与えてしまう可能性があるためです。
日本歯科医師会の資料でも、「審美治療」という表現は広告不可とされています。
また、「審美歯科」は法律で定められた正式な診療科名ではないため、診療科名として広告することもできません。



なるほど、「審美歯科」という言葉は便利だけど、それだけだと患者さんには伝わらないのか…



はい、誤認を防ぐため、具体的な治療名で説明することが大切です。
患者さんが適切な治療を選択できるよう、広告では「審美歯科」という包括的な表現ではなく、具体的な治療法を明記することが求められます。
自由診療における広告の考え方
「自由診療」とは、公的医療保険が適用されず、治療費の全額を患者さんが自己負担する診療を指します。
歯の見た目を改善することを目的とした審美領域の治療は、その多くが自由診療に該当します。
自由診療は、保険診療と比べて患者さんの費用負担が大きくなるため、広告においては特に慎重な情報提供が求められます。
治療内容、費用、期間や回数、そして伴う可能性のあるリスクや副作用について、患者さんが十分に理解し、納得した上で治療を選択できるよう、詳細かつ正確な情報を示す必要があります。
ウェブサイトなどで自由診療の情報を掲載する場合には、「限定解除要件」と呼ばれる特定の条件を満たすことが必要になります。
注意点 | 内容 |
---|---|
費用負担 | 全額自己負担となるため、費用の明確な提示が不可欠 |
情報の重要性 | 患者が治療選択を適切に行うため、詳細な情報提供が必要 |
限定解除要件の適用 | ウェブサイト等で広告する場合、特定の要件を満たす必要がある |
自由診療に関する広告では、保険診療以上に丁寧で分かりやすい情報提供を心がけることが重要です。
知っておくべき審美歯科広告の7つの禁止事項


医療広告ガイドライン遵守は、患者さんからの信頼を得て、健全なクリニック運営を続けるために極めて重要です。
意図せずルールを破ってしまわないためにも、どのような表現が規制対象となるのかを正確に把握しておく必要があります。
ここでは、審美歯科に関連する広告で特に注意すべき7つの禁止事項について、一つひとつ詳しく解説していきます。
これらのルールを理解し、日々の情報発信に活かしましょう。
禁止事項1 「審美歯科」という診療科名のような表記
まず、「審美歯科」という言葉を、あたかも正式な診療科名であるかのように広告で使うことは認められていません。
これは、看板やウェブサイト、パンフレットなど、あらゆる広告媒体に共通するルールです。
医療法で定められている歯科の診療科名は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つのみとなります。
「審美歯科」はこの中に含まれていないため、診療科名として標榜(広告などでうたうこと)はできません。



看板やウェブサイトに「〇〇審美歯科」と書くのはダメということですか?



はい、医療法で定められた診療科名以外を標榜することは原則として禁止されています
クリニックの名称自体に「審美歯科」を含む場合や、「審美歯科センター」のような表現も、誤解を招く可能性があるため注意が必要です。
禁止事項2 他院と比較する優良性表現(比較優良広告)
他のクリニックと比較して、自身のクリニックが優れているかのように示す表現は「比較優良広告」として禁止されています。
患者さんが客観的な情報に基づいて医療機関を選べるようにするためのルールです。
例えば、「地域No.1の審美歯科」「日本有数の実績」「モデルも通う〇〇クリニック」といった表現は、客観的な事実による裏付けがない限り使用できません。
厚生労働省の医療広告ガイドラインでも、こうした優良性に関する比較表現は厳しく制限されています。
具体的なデータや調査結果に基づいて表現する場合でも、その根拠(調査機関、調査年、調査対象など)を明確に示す必要があり、恣意的な比較や誤解を招く表現は認められません。
あくまでも、科学的根拠に基づき、正確な情報を伝えることが求められます。
禁止事項3 効果や安全性を保証するような表現(誇大広告)
治療の効果や安全性を過度に強調したり、事実と異なる情報で患者さんを誘引したりする表現は「誇大広告」にあたり、禁止されています。
医療には必ず不確実性が伴うため、誤った期待を抱かせる表現は許されません。
「絶対に白くなるホワイトニング」「痛みゼロのセラミック治療」「100%成功するインプラント」といった表現は、医療の不確実性を無視した断定的な表現であり、患者さんに誤解を与えるため認められません。
また、「満足度99%!」といったアンケート結果の表示も、調査方法や対象者によっては客観性が担保されず、誇大広告と判断される可能性があります。
どのような治療にもリスクや副作用、限界があることを踏まえ、良い面だけでなく注意すべき点についても誠実に情報提供を心がける必要があります。
禁止事項4 品位を損ねる内容(公序良俗違反)
医療に関する広告として、その品位を損ねるような内容や、公序良俗に反する表現も禁止されています。
医療は人の生命や健康に関わるサービスであり、その広告には節度と配慮が求められます。
具体的には、わいせつな表現、差別的な表現、猟奇的な表現、不安を過剰に煽るような表現などが該当します。
例えば、歯の見た目に関する悩みをことさらに強調し、「このままでは将来大変なことになる」といった形で治療を受けなければ不幸になるかのような印象を与える広告は、品位を損ねる内容とみなされる可能性があります。



キャンペーン情報の掲載は大丈夫でしょうか?



費用を強調しすぎたり、「今だけ」「限定」といった言葉で射幸心を煽ったりする表現は、品位を損ねる可能性があるため注意が必要です
医療は人の健康を守る尊いサービスであることを常に意識し、社会通念上、不快感や嫌悪感を与えない、節度ある表現を心がけましょう。
禁止事項5 患者の個人的な体験談や口コミの掲載
治療を受けた患者さんの個人的な感想や体験談、いわゆる「口コミ」を広告に掲載することは禁止されています。
これは、患者さん個人の主観に基づく情報は、必ずしも他の人に当てはまるとは限らないためです。
たとえそれが事実であったとしても、個人の感想は主観的なものであり、他の患者さんにも同様の効果があるとは限らないため、広告としては不適切と判断されます。
「〇〇さんの歯がこんなにきれいになりました!」といった喜びの声を紹介することは、たとえご本人の許可を得ていたとしても広告では認められません。
これは、クリニックのウェブサイトやSNS、パンフレットなども同様です。
Googleマップなどの口コミサイトへのリンクを設置すること自体は問題ありませんが、その内容を自院の広告媒体に引用・転載することはできません。
患者さんの声を紹介したい場合は、広告と明確に区別されたコンテンツ(例:院内掲示、患者向け資料など)で、限定的な範囲で行う必要があります。
禁止事項6 治療前後の写真(ビフォーアフター)の掲載
治療前と治療後の状態を比較する、いわゆる「ビフォーアフター写真」を広告に掲載することも、原則として禁止されています。
これは、体験談と同様に、個別の症例がすべての人に当てはまるわけではないためです。
これらの写真は、特定の患者さんの結果を示すものであり、他の患者さんにも同じ結果が得られるかのような誤解を与える可能性があるため、医療広告ガイドラインでは「治療等の効果又は効能に関する事項」として扱われ、原則禁止の対象となります。
特に審美歯科領域では、見た目の変化が分かりやすいため広告で使いたくなるかもしれませんが、注意が必要です。



症例写真としてウェブサイトに載せるのもダメなのですか?



ウェブサイトの場合、後述する限定解除要件をすべて満たせば、説明を付記した上で掲載可能な場合がありますが、バナー広告など純粋な広告として利用することはできません
治療効果を示す際は、写真だけに頼るのではなく、治療方法に関する客観的なデータや、一般的な経過、リスクなどの情報と合わせて、誤解を与えないように丁寧に説明することが重要です。
禁止事項7 客観的事実に基づかない情報の掲載
科学的な根拠や客観的な事実に基づかない情報、未承認の治療法や医薬品に関する情報などを広告に掲載することは禁止されています。
医療広告は、患者さんが適切な治療を選択するための重要な情報源であり、その内容は正確でなければなりません。
例えば、厚生労働省の承認を得ていない海外の材料や治療法を、あたかも国内で承認され広く行われているかのように紹介したり、その効果を強調したりすることはできません。
「最新の〇〇療法で劇的な効果!」といった表現も、その治療法が国内で確立され、安全性や有効性が客観的に評価されているものでなければ、誇大広告や虚偽広告とみなされる可能性があります。
使用する薬剤や材料についても、医薬品医療機器等法(薬機法)の規制を遵守する必要があります。
広告で発信する情報は、常に正確性と客観性を担保することが不可欠です。
ウェブサイトで審美治療情報を発信するための限定解除要件


医療広告ガイドラインでは、原則として広告できない事項も、特定の条件を満たすことでウェブサイトなどでの情報提供が可能になります。
この条件を「限定解除要件」と呼び、患者さんへ正確な情報を届けるためには、この要件を正しく理解し、遵守することが極めて重要です。
具体的には、問い合わせ先の明記、自由診療の場合の治療内容・費用・期間・回数といった詳細情報、主なリスクや副作用に関する情報、そして必要に応じて未承認医薬品等に関する情報の提供が求められます。
これらの要件をウェブサイト上で満たすことで、審美治療に関する情報を適切に発信し、患者さんの誤解を防ぎながら、治療選択に必要な情報を提供することが可能となります。
限定解除によって可能になる広告表現
限定解除とは、医療広告ガイドラインで定められた特定の要件を満たすことで、通常は広告が制限される自由診療の内容などについて、ウェブサイト等で情報提供できるようになる仕組みです。
この限定解除の要件を満たすことで、例えばホワイトニングやセラミック治療といった具体的な自由診療の治療内容、標準的な費用、治療期間・回数、そしてそれに伴うリスクや副作用といった詳細な情報を掲載することが可能になります。
限定解除は、患者さんが治療を受けるかどうかを判断するための重要な情報を、透明性を持って提供するための制度といえます。
限定解除によってウェブサイト等で掲載可能になる情報の例 |
---|
自由診療における治療内容の詳細 |
自由診療の標準的な費用(税込表記が望ましい) |
自由診療の標準的な治療期間や通院回数の目安 |
自由診療に伴う主なリスクや副作用 |
治療を担当する医師・歯科医師の専門性に関する情報 |
医薬品医療機器等法における承認状況(未承認医薬品等の場合) |



限定解除って、具体的にどんな情報を載せればいいんだろう?



はい、問い合わせ先や治療費、リスクなどを、患者さんが分かりやすいようにウェブサイトに明記する必要があります。
ただし、限定解除が適用されたとしても、虚偽・誇大広告や比較優良広告など、ガイドラインで禁止されている表現は依然として認められません。
あくまで、患者保護の観点から必要な情報を、ルールに則って提供することが求められます。
要件1 問い合わせ先の明記
限定解除の第一歩として、患者さんが医療機関に容易に連絡を取れるように、問い合わせ先を明確に記載することが必須です。
具体的には、クリニックの電話番号やメールアドレス、問い合わせフォームへのリンクなどを、ウェブサイトの分かりやすい場所(例:ヘッダー、フッター、アクセスページなど)に表示する必要があります。
これにより、患者さんが治療に関する疑問や不安を抱いた際に、すぐに相談できる体制が整っていることを示すことができます。
記載すべき問い合わせ先の例 |
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電話番号 |
メールアドレス |
問い合わせフォームへのリンク |
担当部署名(該当する場合) |
患者さんが情報を求めている時に、すぐに連絡手段を見つけられるように配慮することが、信頼関係の構築にもつながります。
要件2 自由診療に関する詳細情報(治療内容・標準的な費用・期間・回数)
自由診療に関する情報をウェブサイトで提供する場合、患者さんが治療を受けるかどうかを判断するために不可欠な情報を、具体的かつ分かりやすく記載することが求められます。
特に重要なのは、治療内容(どのような手技で行うか)、標準的な費用(税込か税別かも明記)、治療にかかる標準的な期間や通院回数の目安です。
費用については、「〇〇円~〇〇円」といった範囲での表記も可能ですが、患者さんに誤解を与えないよう、どのような場合に費用が変わるのか補足説明を加えることが望ましいでしょう。
記載すべき自由診療の詳細情報 |
---|
具体的な治療内容 |
標準的な費用(税込/税別明記) |
標準的な治療期間の目安 |
標準的な通院回数の目安 |



費用って、ピッタリの金額じゃないとダメなのかな?



いいえ、「〇〇円~〇〇円」のような範囲表記や、「標準的な費用〇〇円」といった形でも大丈夫です。ただし、分かりやすさが大切ですね。
これらの情報を正確に提供することで、患者さんは治療の全体像を把握し、安心して治療を検討できます。
要件3 主なリスクや副作用に関する情報提供
自由診療に関する情報を提供する上で、治療に伴う可能性のある主なリスクや副作用についても、必ず記載する義務があります。
これは、患者さんが治療のメリットだけでなく、潜在的なデメリットも理解した上で、納得して治療を選択(インフォームド・コンセント)できるようにするためです。
すべてのリスクを網羅する必要はありませんが、その治療法において一般的に起こりうる主なリスクや副作用については、具体的に記載する必要があります。
審美治療におけるリスク・副作用の記載例 |
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ホワイトニング:一時的な知覚過敏の可能性 |
セラミック治療:破損のリスク、辺縁からの二次う蝕 |
インプラント治療:外科手術に伴うリスク、感染 |



リスクを書くと、患者さんが治療をためらわないかな…?



正直な情報提供は、むしろ患者さんとの信頼関係を築く上でとても大切ですよ。
リスクや副作用に関する誠実な情報提供は、万が一のトラブルを未然に防ぐだけでなく、患者さんからの信頼を得るためにも不可欠な要素です。
要件4 未承認医薬品等を用いる場合の記載
国内で医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を得ていない医薬品や医療機器を用いた治療(自由診療)について情報を発信する際には、その旨を明確に記載し、関連情報を提供することが義務付けられています。
特に、海外では承認されていても国内では未承認の薬剤(例:特定のホワイトニング剤)や、歯科医師が独自に輸入した材料などを使用する場合は注意が必要です。
ウェブサイトには、①未承認医薬品等であること、②入手経路等(例:「個人輸入により入手」)、③国内の承認医薬品等の有無、④諸外国における安全性等に係る情報を明記する必要があります。
詳細は厚生労働省のガイドラインで確認しましょう。
未承認医薬品等に関する記載事項例 |
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未承認医薬品等である旨 |
入手経路等 |
同一の性能を有する国内承認医薬品等の有無 |
諸外国における安全性等に係る情報の明示(可能な範囲で) |
患者さんが適切な情報に基づいて治療を選択できるよう、これらの法的要件を遵守し、正確な情報を提供することが求められます。
医療広告ガイドラインに準拠した適切な情報発信と対策


医療広告ガイドラインを正しく理解し、遵守することは、患者さんからの信頼を得るために不可欠です。
ルールに沿った適切な情報発信を心がけることで、審美歯科に関する情報を誠実に伝えることができます。
この見出しでは、広告可能な基本情報、具体的な治療法の広告例、違反時の罰則、関連資料の確認方法、そして院内でのチェック体制構築について、具体的な対策を解説します。
これらの対策を実践することで、ガイドラインに準拠した適切な広告活動が可能となります。
ルールを守り、患者さんに正しい情報を届けましょう。
広告可能な基本情報の一覧
医療広告ガイドラインでは、虚偽や誇大広告を防ぎ、患者さんが適切な医療を選択できるようにするため、広告できる情報が定められています。
一方で、法律で広告が認められている基本的な情報については、ウェブサイトやパンフレットなどに掲載することが可能です。
これらの広告可能な基本情報には、医療機関の名称や所在地、診療時間、所属する医師の氏名などが含まれます。
ただし、表現方法には注意が必要な場合もあります。
例えば、診療科名は厚生労働省令で定められたもの(歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科)に限られます。
広告可能な基本情報 | 具体例・注意点 |
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医療機関の名称、所在地、連絡先 | 正式名称、住所、電話番号、メールアドレス |
診療日・診療時間 | 休診日、曜日ごとの診療時間 |
診療科名 | 法令で定められた名称(歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科) |
医師・歯科医師の氏名 | フルネーム |
専門性に関する資格名 | 厚生労働大臣が定める基準を満たしたもの(例:歯周病専門医) |
対応可能な疾患・治療法 | 広告可能事項として認められている範囲内 |
導入している医療機器 | 一般的な名称(特定の製品名は原則不可) |



どんな情報なら広告しても大丈夫なのかな?



定められた基本的な情報は広告可能です
ガイドラインで定められた広告可能な基本情報を正確に掲載することは、患者さんが医療機関を選ぶ上で重要な判断材料となります。
具体的な治療法(ホワイトニング等)の適切な広告例
審美歯科に関連する治療について広告する際は、「審美歯科」という包括的な表現を避け、具体的な治療法ごとに必要な情報を記載することが重要です。
自由診療にあたる治療の場合は、特に「限定解除要件」を満たす必要があります。
例えば、ホワイトニング治療についてウェブサイトで紹介する場合、以下の情報を網羅することで、ガイドラインに準拠した適切な広告とみなされます。
これは、セラミック治療やインプラント治療など、他の自由診療の広告においても同様の考え方です。
限定解除要件を満たした上で、治療内容を具体的に示しましょう。
記載すべき項目例(ホワイトニングの場合) | 記載内容の例 |
---|---|
治療名称 | オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング |
治療内容の説明 | 歯科医院で行う方法、自宅で行う方法、使用する薬剤、施術時間など |
自由診療である旨と標準的な費用 | 「保険適用外」「標準費用:〇〇円(税別)~〇〇円(税別)」のように範囲で示すことも可能 |
標準的な治療期間・回数 | 「治療期間:約1ヶ月」「通院回数:平均3回」など |
主なリスク・副作用 | 「一時的に歯がしみる(知覚過敏)場合がある」「後戻りの可能性がある」など |
問い合わせ先 | 電話番号、メールアドレスなど |



ホワイトニングの広告を出したいんだけど、どう書けばいい?



限定解除要件を満たせば、詳細な情報を記載できます
「審美歯科」という言葉を使わずに、ホワイトニングやセラミック治療など、個別の治療法について、限定解除の要件を満たした情報を丁寧に記載することが、適切な広告表現の基本です。
ガイドライン違反時の行政指導や罰則
医療広告ガイドラインに違反する不適切な広告表示が確認された場合、行政による指導や罰則の対象となる可能性があります。
これは、患者さんの健康や安全を守るための重要な措置です。
違反が認められると、まずは都道府県などから報告命令や立入検査が行われ、是正命令が出されることがあります。
命令に従わない場合や、悪質な違反と判断された場合は、最大で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、医療機関名の公表といった行政処分に至るケースもあります。
違反時の主な措置 | 内容 |
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報告命令・立入検査 | 都道府県等による事実確認 |
中止・是正命令 | 広告内容の修正や削除の命令 |
罰則(懲役・罰金) | 命令に従わない場合や悪質な場合に適用される可能性(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金) |
行政処分(医療機関名公表など) | 重大な違反や繰り返される違反に対する措置 |



もしルール違反してしまったら、どうなるんだろう…?



行政指導や罰則が科される可能性があります
ガイドライン違反は、法的なペナルティだけでなく、医療機関としての信頼を大きく損なうことにもつながります。
意図しない違反を防ぐためにも、広告内容のチェックは慎重に行いましょう。
厚生労働省等の関連資料の確認方法
医療広告ガイドラインの内容や解釈は、社会情勢の変化などに応じて見直されることがあります。
常に最新の情報を把握するためには、厚生労働省などが公開している公式資料を定期的に確認することが不可欠です。
情報の主な確認先としては、厚生労働省のウェブサイトが挙げられます。
「医療広告ガイドライン」本文はもちろん、具体的なQ&Aや、ウェブサイト広告に関する「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」などが公開されています。
これらの資料に目を通すことで、具体的な表現の可否や注意点を理解できます。
確認すべき主な資料 | 確認先(主に厚生労働省ウェブサイト) |
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医療法における病院等の広告規制について | ガイドライン本文、関連通知 |
医療広告ガイドラインに関するQ&A | 具体的な疑問点に対する回答集 |
医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書 | ウェブサイト広告に関する具体的なOK例・NG例、限定解除要件の解説 |
関連通知・事務連絡 | 最新の解釈や注意喚起 |



最新のルールはどこで確認すればいいですか?



厚生労働省のウェブサイトで公開されている公式資料を確認しましょう
インターネット上の解説記事なども参考になりますが、最終的には一次情報である公式資料を確認することが最も確実です。
定期的にアクセスし、最新情報をチェックする習慣をつけましょう。
院内での広告内容チェック体制の構築
医療広告ガイドラインへの違反を未然に防ぎ、適切な情報発信を継続するためには、院内で広告内容をチェックする体制を構築することが非常に重要です。
担当者一人に任せるのではなく、組織として取り組む意識が求められます。
具体的な体制としては、まず広告に関する責任者を明確に定めることが考えられます。
その上で、作成した広告(ウェブサイト、パンフレット、SNS投稿など)を公開する前に、最低でも2名以上の複数人で内容を確認するフローを設けることが望ましいです。
ガイドラインの要点をまとめたチェックリストを作成し、活用するのも有効な手段です。
必要であれば、医療広告に詳しい外部の専門家(弁護士やコンサルタント)に相談することも検討しましょう。
チェック体制構築のポイント | 具体的な取り組み例 |
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責任者の明確化 | 広告内容に関する最終的な判断を行う担当者を定める |
複数人によるチェック | 作成者以外の視点を取り入れ、客観的に内容を確認する |
チェックリストの活用 | ガイドラインの禁止事項や限定解除要件などを漏れなく確認するためのリストを作成・運用する |
定期的な勉強会の実施 | スタッフ間でガイドラインへの理解を深める機会を設ける |
外部専門家への相談 | 不明点や判断に迷う場合に、弁護士やコンサルタントなどの意見を求める |



うっかり違反しないためには、どうすれば良いだろう?



院内で広告内容を確認する仕組みを作りましょう
院内でのチェック体制を整備し、継続的に運用していくことが、ガイドライン遵守の徹底と、患者さんからの信頼維持につながります。
手間を惜しまず、確実なチェックを行いましょう。
よくある質問(FAQ)
- 「審美歯科」という言葉は、クリニックのウェブサイト広告で使ってはいけないのですか?
-
原則として、「審美歯科」という言葉を診療科名のようにウェブサイトなどで広告することは認められていません。
これは、医療法で定められた正式な診療科名ではなく、治療内容が多岐にわたるため患者さんに誤解を与える可能性があるためです。
ただし、広告可能事項の限定解除要件(問い合わせ先の明記、自由診療に関する費用やリスク等の情報提供など)を全て満たしたウェブサイトであれば、「審美歯科」に関連する具体的な治療法(ホワイトニングなど)について説明することは可能です。
医療広告ガイドラインをよく確認し、歯科のウェブサイト広告におけるルールを遵守しましょう。
審美歯科の広告規制は厳しいため注意が必要です。
- 審美歯科治療の成果を示すため、治療前後の写真(ビフォーアフター)を広告に使いたいのですが、可能ですか?
-
治療前後の写真(いわゆるビフォーアフター写真)を広告に掲載することは、医療広告ガイドラインにおいて原則として禁止されています。
これは、個人の治療結果を示すものであり、全ての患者さんに同様の効果があるかのように誤認させる可能性があるためです。
ウェブサイトの場合、限定解除要件を満たし、治療内容やリスク、費用などの詳細な説明を併記すれば症例写真として掲載できるケースもありますが、広告バナーなどへの使用はできません。
治療効果を示す広告表現には十分注意してください。
歯科の広告で症例写真を使用する際は、規制を理解することが大切です。
- 自由診療であるホワイトニングについて広告する場合、どのような点に注意すれば良いですか?
-
自由診療であるホワイトニング治療についてウェブサイトなどで広告する場合、医療広告ガイドラインで定められた「限定解除要件」を満たす必要があります。
具体的には、①問い合わせ先(電話番号など)の明記、②自由診療である旨、治療内容、標準的な費用、治療期間・回数の目安、③主なリスクや副作用(例:知覚過敏の可能性)に関する情報提供が必須です。
ホワイトニング 広告規制を守り、これらの情報を正確かつ分かりやすく記載することで、患者さんが適切に情報を理解し、判断できるようになります。
リスクや副作用の表記を怠らないようにしましょう。
- 他のクリニックよりも優れている点をアピールしたいのですが、どのような表現が広告規制に違反しますか?
-
他のクリニックと比較して自院が優れていると示すような表現(比較優良広告)や、客観的な事実に基づかない、効果や安全性を過剰にうたう表現(誇大広告)は、医療広告ガイドラインで禁止されています。
「地域No.1」「最高の技術」といった根拠のない表現や、「絶対に安全」などの断定的な表現は使用できません。
審美歯科 広告 禁止事項を理解し、客観的な事実に基づいた、誠実な情報発信を心がけることが重要です。
歯科における比較優良広告や誇大広告は厳しく規制されます。
- 患者さんの満足の声(口コミ・体験談)をウェブサイトに掲載するのは、医療広告ガイドラインで禁止されていますか?
-
はい、治療を受けた患者さん個人の感想や体験談、いわゆる口コミをクリニックのウェブサイトなどの広告媒体に掲載することは、医療広告ガイドラインで禁止されています。
これは、個人の主観的な感想であり、他の患者さんにも同様の効果があるとは限らないため、誤解を招く可能性があるからです。
患者さんの声を紹介したい場合は、広告とは明確に区別し、限定的な方法で行う必要があります。
歯科 ホームページ 広告では、歯科 広告 口コミや体験談の掲載はできません。
- もし医療広告ガイドラインに違反してしまった場合、どのような罰則がありますか?また、広告表現について相談できる窓口はありますか?
-
医療広告ガイドラインへの違反が認められた場合、行政(都道府県など)から報告命令や立入検査、是正命令が出される可能性があります。
命令に従わない場合や悪質なケースでは、懲役や罰金といった罰則が科されたり、医療機関名が公表されたりすることもあります。
広告表現について不明な点がある場合は、厚生労働省のウェブサイトで公開されているガイドライン本文やQ&Aを確認するほか、管轄の保健所や、医療法務に詳しい弁護士、医療専門の広告代理店などに相談することを推奨します。
審美歯科 広告 違反とならないよう、事前にしっかり確認しましょう。
医療広告 相談窓口や厚生労働省 医療広告に関する情報を活用してください。
まとめ
この記事では、審美歯科に関する広告で守るべき大切なルールについて解説しました。
特に、クリニックのウェブサイトも医療広告ガイドラインによる規制の対象となる点は、見落としがちな重要なポイントです。
- ウェブサイトやSNSも医療広告ガイドラインの規制対象
- 「審美歯科」という診療科名のような表現は原則広告できない
- 患者さんの体験談や治療前後の写真の掲載は禁止
- 限定解除要件を満たせば、費用やリスクなどの詳細な情報提供が可能
これらのルールをしっかり理解し、患者さんに誤解を与えない正確な情報発信を心がけましょう。
まずはご自身のクリニックのウェブサイトがガイドラインに沿っているか、この記事を参考に確認してみることをおすすめします。